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| 高萩裕司 : 第三回 パレス一家言 |
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musicことbonnie billyことbonnie“blue”billyことbonnie prince billyことwill oldhamが来日するようです。コトコトコトコト煩い様に思われますが、彼は自分のアーチスト名をコロコロコトコト変えているのでしかたがない。かといってクルクルクルクルと千変万化するわけではなく、御覧のように一見高貴なキーワード、「palace」「prince」などを軸に、その実地味に細々と、両の掌に刻まれた深い皺をため息混じりにジイと見つめながら「うん。前は『パレスソングス』にしたから…ソングスソングス……ミュージック、か。安直に過ぎるかな。まあいいや。今度は『パレスミュージック』にしたら善かろう。あ、ここにもササクレがあるわい。あ痛。」といった按配で、くるくる七色にあらず草色土色枯葉色に細々ボソボソと名義変装を楽しんでいるようなのです。こんな彼を、私は粋と云いたい。ええ、当然ハゲています。歌声もカン高くフラつきがちで、とうぜん発音も不明瞭、とくれば勿論アナタの期待は裏切りません。乱暴を承知で云ってしまえば、某ダニエル・ジョンストンと並ぶ天然記念物級のシンガーソングライターと云えましょう。ダニエル・ジョンストンも来日を果たした今、我々はそれこそ諸手を上げて彼の来日を歓迎せねばなりません。「よいよい。そのボニーハムだかパレスウィリーだかブルーブループリンスだかなんだか知らないが、そいつがハゲてるのもわかったし歌声が高くて発音が不明瞭なのもわかった。それで肝心の曲はどんな具合なのだ。例えば誰みたいなんだ?」とお思いになりましたか?なっていない?いや、なったことにしましょう。つまりアナタは「よいよい。………誰みたいなんだ?」と上記のような疑問を持ちました。いけない。アナタの悪い癖です。私はここで、古今東西有名無名のアーチスト名をズラズラと並べ立て、彼の虚像を浮き立たせようなどとは思わない。レコード店の推薦ポップじゃあるまいし。アナタがどんな動機でレコードを手に取り、続いて購入に至るのか私にはわかりませんが、「○○的」「○○が好きな人は要チェキ!」だとか、「○○と△△を足して二で割った感じ!」だとか云う宣伝文に躍らされるのだけは避けたほうがよい。同じ銭を出して購入所有ひいては期待、などを得るのならば、一よりはニ、二よりは十、想像力を楽しませる方が賢明、いや、当然至極と言わせて頂きましょう。そこで私は、幾つかのウィル・オールダムを巡るキーワードを皆さんの前に提示することで、多くの人々にパレスを聴いてもらう、というこの「パレス一家言」唯一の目的、ないしは責任を果たしたいと思うのです。そこのアナタは興味をもたれないどころか、この図らずも扇情的になってしまった紹介文のために、「ふん。探すものか聴くものか」とか「ヘッ。ゼッテエきかねーよ」もしくは「あら。何としてでも探すものですか聴くものですか」などと思われるかもしれない。いいでしょう。選択肢は星の数ほど在りましょう。また、そこのアナタは店頭で前掲いずれかの名義によるレコードに偶然遭遇するかもしれない。あるいはその存在に気付かないかもしれないが、ふとそのラベルが気になるかもしれない。そうして手にとってみる。ジャケットを見る。いつだったか読んだ「パレス一家言」から思い出される様々なキーワードが、レコードの質感、重量、色彩、形状等、目の前の諸具象的要素と融和化合し、耳に遠く音楽を鳴らす。視覚もすでにその音楽を捉え、頭の中にはその視覚聴覚の呼び起こしたイメージや、湧きいずる新たなキーワードが跳躍し、先ほど思い出されたキーワードは脳内を追い出され、床の上にボロボロとこぼれ落ちる……馬…オハイオ……草原に宮殿…ニーチェ…ハゲの髭…郊外は……シャラシャラ…遠くポツンと老木……小舟…緩い流れ…シャラシャラ…ねだる気もなき駄々……サヨナラは云いません…ブルーブルージーンズ…枯葉のワルツ……二本指ブルース…線画……影がない…影そのもの………ボロボロボロボロ |
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